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活動レポート

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安田菜津紀氏 トークライブ

2008年02月09日 更新

◎講 師: 安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
◎日 時: 2009年2月9日(日) 14:00~15:30
◎場 所: ギャラリーキムラ
◎参加人数: 71名

 

◎事後レポート

 

◆内容◆

 

スタッフの心配をよそに会場はみるみるうちに満席になった。立ち見客も入らないかと危惧するほどだった。熊本、九州のみならず遠くは関西からもファンがおしかけた。

 

安田菜津紀氏21歳。「写真を通じて世界を伝えたい、写真に窓になってもらう。」その最初の言葉が印象的だった。
分かりやすい写真を問われる組織のカメラマンではなく、取り組みたい話題・個人の参加性が問われるフリーランスという立場を選んだ菜津紀ちゃんの力強さを感じる。

 

・なぜ写真を?
まず菜津紀ちゃんは原点から話してくれた。「カンボジアとの出会いがあったから。」国際協力への興味、ボランティアからではないそうだ。彼女には中学時代から「家族」への疑問があった。「人の絆」って?・・・

 

菜津紀ちゃんが高校1年生のころ、日本の子どもをアジアへ派遣・取材させるというプログラムに出会い、参加した。他国の子達の家族への価値観を知れば、自分の疑問が解消されるかもしれない。
「国境なき子ども達。http://www.ekokoro.jp/ngo/knk/」  たまたまその派遣先がカンボジアだったそうだ。

 

「どうして戦争してはダメなのか?」そんな疑問も抱きつつ、当時内線後10年たっていたカンボジアは、人身売買最低ランクに位置していた。
赤ちゃんを抱いて物乞いしている女の子。バッタ売りの子。菜津紀ちゃんが見たタイ側に流れ込んでいるカンボジアの子達は、皆朝から晩まで働いていた。手足のない子などは民の同情を引くための道具として物乞いを強要させられている。「学校に通いながら働ける」そんな言葉にだまされて安値で子を手放す親も多いそうだ。現実は、違う。そんな子ども達を前にまず、「どういう態度が失礼でないか?」「自分に出来ることがあるのか?」「友情があれば、相手の子を理解できるか?」そんな思いにかられたそうだ。
そして、カンボジア・バッタンバンにある自立支援施設「若者の家」を訪れた。カンボジアにある多くのそれとは違い、そこは15~6歳を過ぎた子らが60人強は住んでおり、衣食住と教育・職業訓練を受け、将来に備える時間と機会が与えられている。職業訓練では、早く一人前になって家族を養いたいという思いから、洋裁や美容師・バイク修理などすぐ収入になるものが人気だが、最近は大学進学を希望する子も出てきたという。

 

カンボジアの子と話すときは、他人事のように話さないと心が持たないという菜津紀ちゃん。カンボジアの子ども達にとって、家族とは、自分が愛されたい存在・守りたい存在、だった。それを知った菜津紀ちゃんは、自分が家族を守ってこなかったから、思考が八方塞がりになっていたのだと気づいた。カンボジアの子ども達を見ていると、今を強く生きる力を感じた。そう教えてくれた子ども達に、人生を変えてくれた子ども達に恩返しがしたい。ただその思いに駆られた。共に過ごし、お互いの今を見つめ、今を生きたいとする力が、菜津紀ちゃんとカンボジアの子ども達の距離をぐっと近づけてくれたそう。

 

自分に何が出きるのだろうか?帰国後、写真に出会う前までは、思いをトークライブや執筆という形にして出来るだけ多くの人達に伝えてきた。
写真との出会いは、母の恩師との出会いによる。菜津紀ちゃんのお母さんもまた写真家だった。菜津紀ちゃんの記憶にあるカメラを持つ母は、菜津紀ちゃん達より目線を下に構えて家族(子ども達)の写真を撮っていた。
「五感で感じる事を直接伝えること。」 写真にピンときた菜津紀ちゃんだが、実にカメラを持つようになりまだ2年しか経過していない。

 

・去年一年間の仕事。

 

□去年の始めには、戦後0年という沖縄。
・名護市米軍基地「辺野古」。埋め立てで基地を拡大しようとしている。ジュゴンの住むへのこの海の環境破壊をとめたい。海人は、自分は海が好き、ただそれだけだと言うが、米軍基地があることで仕事が供給されるという理由から、反対する人より、しない人の方が多い沖縄。
・沖縄の北部「高江」という場所。ヘリパット反対住民が座り込みをしている。イスラエル軍の練習の可能性がある土地。

 

□2月にはシリア。イラク戦争により170万人がシリアに入り込んでいる。シリアはイラク避難民の受け入れを表明していない。一時的にゲストとしてはOKだが労働を認めていない。不法労働の実態。多数の人身売買。クルド人はもはや国を持たない民族。イラクに戻れば命を落とすかもしれない。しかし、シリアでは追い詰められもはや人権がない。「自分たちはチェスのコマだ。する人は傷つかない。」
「アラブ人はイスラムにテロリストとして扱われるが、違うと思ってほしい!」と訴える菜津紀ちゃんの友人。それをどう伝えるか?奈津紀ちゃんの新たな課題になった。

 

□ポイペト(タイ・カンボジア国境、スラム街)には過去8回。人身売買が月1600人以上といわれる(うち半分以上子ども)。無事保護されるのは10%未満。一度売られた子どもは保護を受けられない。もはや、人身売買を受け入れる地域体制が出来ている。貧しい人程他人に何かを与えようとしたり、日常で自分達の小さな幸せを見つけるのが上手だと菜津紀ちゃんは言う。しかし、全ての子達が前に進んでいるわけではなく、日常的暴力、心的外傷に苦しみ続ける子達も多い。教育問題は近年クローズアップされてきているが、声にならない声も多いという。菜津紀ちゃんの役割は、それに耳を傾けていくこと。光が当たらない所に光を当て続けたい、それを少しでも見て貰えれば嬉しいと語る。カンボジアは子どものいる国だから、菜津紀ちゃんは一生付き合っていくと確証しているという。

 

□夏には中国、パラリンピック。車いすテニス。卓球。TVは情報が単純化されるが、その切り落とされたところに大切なものがある。だから、その多様性のいくつかを伝えたい!ヨルダンの女性(マハさん:車椅子卓球金メダリスト)に教えられた「状況にとらわれずに人を見なさい」という言葉をいま写真を撮るときに大切にしているという。そんな思いのぎゅっと詰まったパラリンピックの写真展が、ぎゅぎゅぎゅっと凝縮されてトークライブと共に再び熊本で開催されます!

 

フリーには軸足、原点が必ずあるといわれる。菜津紀ちゃんにとってそれはテーマを貰ったというカンボジアにある。命の重み、軸になるテーマを持っている人はぶれない。だからこそ菜津紀ちゃんは、書類などを調査するわけではなく、政経的な見方に偏らず、現地の人と話すことを大切にしている。

 

自身の撮る子ども達に負けない笑顔をもつ菜津紀ちゃんのカメラでどんな光が生み出されるか、今後益々楽しみでならない。

 

文責:山西由希子

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