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訪問看護見学後のレポート22

2013年12月29日 更新

◎日 時: 2013年11月11日
◎参加者: 障害者施設のショートステイ職員

 

<見学を終えて感じた事>

 

はじめに

 

私は大阪府吹田市で重度重複障害者と呼ばれる方々が通所する施設で働いているが、重度の障害を有する小児との接点はない。その中で熊本県の合志市に小児専門の訪問看護ステーションがあることを知り、私にとって異分野だが在宅での小児看護の現場を勉強するため見学させていただいた。

 

11月11日  PM

同行訪問の前に管理者の中本さんよりNEXTEP全体の説明を受ける。

 

NPO法人 NEXTEPは「不登校児サポート事業」や「クリニクラウンの啓蒙事業」「異業種交流会•講演会の企画運営」など子ども全般を支援する事業を行っており、「訪問看護ステーション事業」もその一つとして位置づけられている。訪問事業も、小児在宅支援事業 ステップとして「訪問看護ステーション ステップ♪キッズ」「訪問介護ステーション ドラゴンキッズ」「福祉有料運送サービス」「相談支援事業」と複数の事業を担っている。職員は看護師•ヘルパー•理学療法士など13名の職員が在職している。訪問事業も30分以上いれば医療保険の適応となるため訪問単価も高く、高齢者の介護事業所ほど訪問件数を増やさなくても経営は安定しているとのこと。現在利用している小児•児童は27名で6割ほどが未就学。一人23歳の障害者もいる。

 

熊本県をとりまく小児医療の状況

 

熊本では重度の後遺症を有する小児が年間20~30人生まれており、全国比から見れば重心施設や利用できる病床数は多いが、絶えず万床なため在宅指向が強まっている。NPO法人 NEXTEPの理事長を務める島津智之氏は、独立行政法人機構再春荘病院の勤務医であり、NICUを退院する小児は再春荘病院に転院してもらい、3ヶ月の間に在宅に向けた様々なサポートを行うシステムが構築されている。また退院した後も、月に1週間レスパイト目的で受け入れる体制をとっているため、家族が休息出来る時間が一定確保されている。

 

同行訪問

 

今回の見学では中本さんと介護職員2人に同行、人工呼吸器装着•胃瘻による食事摂取が必要な女児のお宅を訪問し、入浴介助の様子を見学させてもらう。バイタル測定の間、介護職員が入浴の準備にあたる。女児が浴槽内に移動すると看護師が洗身•洗髪を行い、介護職員が身体をほぐし、母親がアンビューバッグを押すなど流れるようなチームワークで介助が行われていた。また浴槽内に遊具を入れ遊びの要素も取り入れるなど、入浴の時間が少しでも楽しく過ごせるよう工夫がなされていた。入浴後は看護師が痰の吸引を行う。その間母親は他の子どもを幼稚園まで迎えに出かけることができ、家族が他の用事に時間を割くことができていた。

 

【学び•感想】

 

?私は成人の障害者が通う施設で働いているが、その利用者が自宅でどのような生活を送っているのかほとんど見たことがない。しかも医療的に様々な処置を必要とする超重症児が病院を出た後で、どのように在宅生活送っているのか初めて見ることができた。在宅では生活歴や家族との関係も如実に感じ取ることができ、利用者の全体像を把握することができる。施設に来る利用者の姿を的確に見るためにも、家庭を訪問することが大切であると感じた。また私が職場でお会いする利用者がどのような経緯を経て現在に至るのか、初めてイメージすることができ、その意味でも大変貴重な訪問だった。
レスパイト入院中(社会的入院)はベッドに横になる時間が長いため(臥床安静ということだろうか)、体の拘縮が激しくなるなどの問題があると聞いた。そのため入浴は身体の汚れを取るだけでなく、身体をほぐすリハビリも兼ねているとのことだった。
大阪でも障害者が利用できるショートステイは少ない。吹田市では市民病院に障害者のショートステイ枠を設けるよう行政に働きかけているが、要望が通った後このような問題も起きうるのだと勉強になった。

 

?小児への支援だけでなく、他の兄弟の行事がある時には親が参加出来るように見守り訪問を行い、父親の協力が得られるよう退院前のカンファレンスへの参加を促す姿勢が印象的だった。障害をもつ児童のいる家庭では、親の関心がその子どもに集中すると、他の兄弟が親に甘えることを我慢してしまう。そして思春期になった時に、抑えていた愛情の不全感が自分を傷つける方向で表出されるケースがあると聞き、小児看護の難しさを感じた。私の業務上感じるが、大人になると兄弟間の問題は固定してしまい解決することは容易ではない。逆に障害者本人よりも、他の家族への支援に困難を感じる時もある。そこを意識して、家族全体をサポートしているのだと感じた。また利用している家族同士が交流出来るようにしており、家族が孤立しないための工夫もなされていると感じた。

 

また中本さんは、処置の合間に家族とコミュニケーションを取りながら情報収集を行っており、利用できる制度の説明も行うと聞いた。場合には役所への申請にも同行するとのことで、ソーシャルワーカーとしての役割も果たしているように見受けられた。

 

?どの職場でも職種間格差は共通の課題だ。私も業務中にその難しさに直面したことが何度もある。小児在宅支援事業 ステップでは看護師の医療職•ヘルパーの福祉職•PTのリハビリ職が在籍していると聞いたが、訪問前の申し送りの様子を見ていても誰がどの職種なのか全く分からなかった。この雰囲気を保つことはかなり凄いことだと感じた。職員間の風通しを良くすることは管理者が意識して働きかけないと維持できるものではない。その職場の明るさが、小児訪問看護を開拓している要因の一つだろうと感じた。

 

?今後は日中活動の場も作る予定であると聞いた。どのような実践をされるのかとても楽しみであり、再度見学させてもらいたい。また別の視点で言えば、この法人がこれだけ積極的に事業展開をしていこうとする背景には、地域の障害児•者施設には重度重複の利用者が受け入れられていなのではないかとの疑問も感じた。中本さんが訪問前に、他の訪問看護ステーションよりも突出することは望んでいないと話していたのも印象的だった。どれだけ一法人が巨大になり、多機能になろうともすくいあげられない利用者は確実に出てくる。やはり地域全体の底上げは全国共通の課題であると感じた。

 

?ヘルパーの訪問時間数や学校への訪問看護のことなどで、行政側との交渉は頻繁に行っているようだった。熊本市意外では、訪問看護に対し柔軟に対応してくれるとのことで、複数の地域をまたがって活動するために地域ごとの行政の違いに苦慮している姿が見受けられた。申請主義の行政は、こちらが要望しなければ動いてくれることはまずない。行政への働きかけはとても重要になってくる。そのため行政側との交渉を工夫し始めており小児訪問看護同様、整っていない分野を切り開こうとするバイタリティーを感じた。中本さんの、制度がなければ作れば良いとの言葉も印象的だった。

 

縦割りに陥りがちな医療•福祉•教育の分野を横断する形で取り組みが行われており、大変感銘を受けた。私も業務外でボランティア活動に関わっているため感じるが、異なる分野の活動を横断的に行うことは難しい。営利と非営利の事業を交流させることも困難で、理解や協力を得ることにも相当の労力を有する。またどの法人も、地域に開かれた施設にするのかが共通の課題だ。職員のマンパワーだけではおのずと限界がある。比較的時間に自由があり機動性もある学生や様々な年代のボランティアの協力を得ることが出来れば、自ずと活気も出てくる。地域社会へのアピールにもつながる。それがNEXTEPでは、異業種交流会や不登校児サポート事業を通じて自然と外部の人と交流し、協力を得られる仕組みができている。実際の調整や運営はかなり大変だとは思うが、当法人が他の事業所にないユニークさを有する要因だと思われる。社会福祉法人よりも比較的自由度の高いNPO法人の良さを活用した好事例だと感じた。

 

地域の企業や団体の協賛も得ており(これは相当難しい)、運動体としても模範的な事例だろう。小児在宅支援事業だけでなく、複合的な活動を行う団体としても大変勉強になった。

 

今回はお忙しいなか貴重な時間を割いていただき、本当にありがとうございました。ステップの職員、快く見学させていただいたご家族の皆様に重ねてお礼申し上げます。

NEXTEPの活動にご支援いただいている特別協賛各社